アメリカのソウルシンガー、オーティス・レディングが1965年に発表した曲です。
発売当時もヒットしましたが、2年後の1967年に「世界一のシンガー」と名高いアメリカの歌手、アレサ・フランクリンがカバーし大ヒット。アレサの代表曲の1つになりました。
オリジナル以上にヒットしてしまった事に対して、オーティスは「あの娘が俺の曲を盗んだ」と語ったそうです。ただ、二人が不仲だったかは分かりません。
アレサのカバーが大ヒットした要因として、アメリカのフェミニズム運動に伴い歌詞を女性目線に変更したことが挙げられます。視点を変えるだけでも受け取り方が一変するという点も、この曲の評価が高い理由です。
両方の歌詞を訳します。
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<オーティス・レディング>
What you want
Honey you’ve got it
And what you need
Baby you’ve got it
(「you’ve got it」は「了解しました」や
「任せてください」など
相手の依頼を引き受ける意味です。
よく店員さんに注文した時に言われます。
「I’ve got it」だと「理解しました」や
「分かりました」など
相手の話を理解した意味になります。)
All I’m asking
Is for a little respect when I come home
(「asking」は「求めていること」や
「尋ねていること」などの意味。
「respect」は「敬意を表す」や
「尊敬する」などの意味。)
Do me wrong
Honey if you wanna
You can do me wrong
Honey while I am gone
(「Do me wrong」は
「私」に対して「悪さをする」の意味。
「不当に扱う」や「浮気/不倫をする」
などの意味があります。
「while」は「その間に」の意味。
「I am gone」は「私が行った」や
「私が去った」の意味なので
自然な日本語になるよう
「僕が居ない間に」と訳しました。)
But all I’m asking for
Hey little girl, you’re so sweeter than honey
And I am about to just give you all my money
(「about to ~」は「~しようとしている」や
「間もなく~する」の意味。)
But all I want you to do just give it, give it
Respect when I come home
Respect is what I want
Respect is what I need
(「what I ~」は「私が~なもの」などの意味。)
Got to, got to have it
You got to
Give it to me baby, everything I need
Give it to me baby, everything I want
(「Got to」は「~しなければいけない」
や「~する必要がある」の意味。
「got to have it」で更に強調して
「どうしても欲しい」や「絶対手に入れたい」
などの意味になります。)
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<アレサ・フランクリン>
Hey, what you want
Baby, I got
What you need
Do you know I got it?
All I’m askin’
(「I got」は「分かった」や「了解」の意味。)
Is for a little respect when you come home
Hey, baby when you get home mister
(「come home」も「get home」も
「帰宅する」を意味しますが
「come home」は話者の元へ「帰る」の意味、
「get home」は「家に到着する」の意味です。
「mister/ミスター」は男性への敬称で
「ご主人様」や「旦那様」などの意味もあります。)
I ain’t gonna do you wrong while you’re gone
Ain’t gonna do you wrong ‘couse I don’t wanna
(「ain’t」は「am not」や「have not」など
否定表現の短縮系で「~じゃない」や
「~じゃねーよ」など軽い言い方になります。
「gonna」は「going to/~するつもり」の短縮形。)
I’m about to give you all of my money
And all I’m askin’ in return, honey
Is to give me my proper
(「proper」は「相応しい」や
「ちゃんと」「適切」などの意味。)
When you get home
Do it for me now, just a little bit
(「now」は「今」の他にも「すぐに」や
「直ちに」「さっさと」などの意味もあります。)
Ooo, your kisses, sweeter than honey
And guess what? So is my money
All I want you to do for me
(「guess what?」は「聞いてる?」や
「何だと思う?」などの意味。
「So is my money/私のお金もそうなのよ」で
女性も働いている、男女平等な立場なことが伺えます。)
Is give it to me when you get home
Whip it to me
When you get home, now
(「Whip it to me」は「はっきり言って」
の意味ですが「抱いて欲しい」の意味もあります。
この歌詞の場合は前者だと思い訳しました。)
R–E–S–P–E–C–T
Find out what it means to me
Take care of TCB (Sock it to me)
A little respect
I get tired
Keep on tryin’
You’re runnin’ out of foolin’ and I ain’t lyin’
(全て大文字で書かれている場合、
怒りや興奮を強調する意味になります。
喜びの興奮の意味で「YOU」と書かれることもあります。
「Take care of ~」で「~を管理する」などの意味。
「TCB」は「take/taking care of business」の略で
「やるべきことをやれ」の意味です。
アフリカ系アメリカ人の方々が使うスラングです。
「Take care of TCB」は
「やるべきことをちゃんと管理して」の意味です。
「Sock it to me」は相手に「強烈なことを言う」や
「一発ぶちかます」の意味ですが、
転じて「抱いて」の意味にもなります。
「running out of ~」は「~が尽きる」や
「~を使い果たす」などの意味。)
‘spect
When you come home
Or you might walk in and find out I’m gone
I got to have
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オーティスの歌詞は、仕事で疲れて帰った時には敬意を示して癒して欲しい、と解釈できます。
よくある愚痴のようですが、確かにこれでは大ヒットには繋がらないかもしれません。
逆にアレサの歌詞は、私も働いているんだから同じように敬意を示して欲しい、と解釈できます。
当時のフェミニズム運動で女性たちが訴えていた家事の分担と社会進出を取り込んだことで、「賛歌」としても愛されています。また、アレサ自身が元旦那による暴力の被害者だったことも、時代を越えて勇気をもらえると愛される要因となりました。
正に曲自体が「リスペクト」されている名曲です。
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