2016年にアメリカを拠点に活動する日本人歌手ミツキが発表した曲です。
商業的には特筆するヒットは見られませんが、とにかく評論家からの評価が高い一曲です。ビルボードやローリングストーン誌、ヴィレッジ・ヴォイス誌、ネット時代に多大な影響力をもつ「ピッチフォーク」などからも称賛されていました。
ミツキ自身が作詞を務め、アメリカ人の父と日本人の母をもつことで生じた苦悩を歌っています。「人種のるつぼ」と呼ばれるアメリカで評価が高いのも納得いく内容です。
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If I could, I’d be your little spoon
And kiss your fingers forevermore
But, big spoon, you have so much to do
And I have nothing ahead of me
(「little spoon/小さなスプーン」と「big spioon/大きなスプーン」は
重なり合うスプーン、つまり「恋人同士」の比喩として使われる表現です。
「little spoon」は後ろから「抱きしめられる側」、
「big spoon」は後ろから「抱きしめる側」を意味します。
「big spoon」の方が気持ちが強いと受け取られます。
「forevermore」は「未来永劫」や「ずっと永遠に/永久に」などの意味。
「ahead」は「前方」や「先」などの意味で
歌詞からは抱きしめたはずの恋人が居なくなるという未来の示唆と解釈できます。)
You’re the sun, you’ve never seen the night
But you hear its song from the morning birds
Well, I’m not the moon, I’m not even a star
But awake at night I’ll be singing to the birds
(「Well/良い」は「まあ」や「さて」などの意味もあります。
「awake」は「起きている」の意味で眠っていない状態の意味合い。)
Don’t wait for me, I can’t come
(この歌詞では「太陽」である「君」のもとには行けない、
それは「私」が君に相応しい存在ではないと思っているのか
誰かにそう思われて「行きたくても行かせてもらえない」の
ニュアンスなのか、どちらにも解釈できるなと思いました。)
Your mother wouldn’t approve of how my mother raised me
But I do, I think I do
And you’re an all–American boy
I guess I couldn’t help trying to be your best American girl
(「approve」は「良いと認める」や「承認する」などの意味。
「approve of how ~」で「~のやり方を良いと認める」の意味。
「all-American ~」は「典型的なアメリカ人~」や
「最もアメリカ的な~」「全米代表の~」などの意味。
「I guess」は「~だと思う」や「~かな」などの意味。
「I couldn’t help trying」は「私はどうしても~を試さずにいられなかった」
の意味で「I couldn’t help trying to be ~」で
「私はどうしても~になろうとせずにいられなかった」
「私は~になりたくてたまらなかった」の意味になります。)
You’re the one
You’re all I ever wanted
I think I’ll regret this
(「You’re the one」は「あなたこそ運命の人」や
「あなたは唯一無二の存在」の意味。
「all I ever wanted」は「私が今までずっと欲しがったもの」の意味。
「I think/私は~と思う」は後に「I’ll/私は~するつもり」と
未来への示唆が続くと「きっと」や「たぶん」に訳されることがあります。
最後の「I think I’ll regret this/私はきっとこれを後悔する」は
「やらなければ後悔する」のか「やった事を後悔する」のか
どちらにも解釈できると思います。
どちらにも解釈できることこそが、未だに世界中が直面している
正解が統一されない人種の壁を示唆しているように思います。)
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今回は頼まれて訳しました。世界中が行き来しやすくなったからこそ、住んでいる国や地域だけでは判断できない「mixed/ミクスト(日本で言うハーフ)」の方や、複数の国籍を持つ方が増えました。見た目の人種で判断してしまうのは、一種の「lookism/ルッキズム」でもあるでしょうね。そんな現代だからこそ誕生し支持された普遍的な一曲だなと思いました。

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