イングランドの歌手・スティングが、1987年に発表したアルバムから1988年に発売した曲です。発売当初は世界中のチャートにランクインするものの、それほどヒットしませんでした。しかしながら、その後世界各国のアーティストからカバーされ続け、多くの時代のチャートを賑わせるヒット曲になりました。
歌詞に出てくる「イングリッシュマン」は、MVにも出演している老人クエンティン・クリスプのことだと、スティング本人が言及しています。モデルだけでなくゲイ・アイコンとしても認知されていた彼が、スティングに言った「罪を犯しても国外追放されずに済むように、帰化書類を受け取るのを楽しみにしている」という言葉から着想を得たそうです。彼の言う「罪」とは、保守的だった社会で「ゲイ」として生きていることだと思われます。
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I don’t drink coffee, I take tea, my dear
I like my toast done on one side
And you can hear it in my accent when I talk
I’m an Englishman in New York
(「toast done on one side
/トーストは片面だけ焼く」について
余談ですが、イングランドで生まれ育った方に
片面焼きの文化があるのか確認したことがあります。
普通に両面で焼くそうです。笑
ただ、ヨーロッパの各地では
イングランドを含めたイギリスの食に対する
思い込みがあるそうです。例えばトーストなら
「彼らの『焼く』は『焦げてカリカリに
なるまで焼く』ことだ」や
「パンが異常に硬いから焼くけど、
イギリスの人たちはあの硬さも好きだから
片面しか焼かない」などです。
この思い込みを逆手に取った歌詞なのかな
と解釈しています。)
See me walking down Fifth Avenue
A walking cane here at my side
I take it everywhere I walk
I’m an Englishman in New York
(アメリカの五番街はショッピングエリアです。
「cane」は「杖」のことで「stick/ステッキ」は
単なる棒状の「杖替わり」を指し、「cane」は
補助の役割を果たす「杖」を意味します。
アメリカでは「杖=肥満や不健康の表れ」でしたが
イギリスでは「杖=ファッションの一部」だったので
ショッピングエリアでも堂々と持って行く
という意味だと解釈しています。)
Oh, I’m an alien, I’m a legal alien
I’m an Englishman in New York
(「alien」は「宇宙人」や「異星人」
の意味として知られていますが
法律用語で「外国人」の意味もあります。
ある国に住んでいるが、
その国の国籍を持たない人を指します。)
If “manners maketh man” as someone said
He’s the hero of the day
It takes a man to suffer ignorance and smile
Be yourself no matter what they say
(1番はクエンティン・クリスプの視点で
2番はスティングの視点から歌う
クリスプのことかなと解釈しています。)
Modesty, propriety can lead to notoriety
You could end up as the only one
Gentleness, sobriety are rare in this society
At night a candle’s brighter than the sun
(「notoriety」は「悪評」の意味。
「end up ~」は「最終的に~になる」や
「~する羽目になる」などの意味があります。
「sobriety」は「断酒」またはその状態
「しらふ」のことを意味します。
そこから「冷静さ」や「穏健さ」も意味します。)
Takes more than combat gear to make a man
Takes more than a license for a gun
Confront your enemies, avoid them when you can
A gentleman will walk but never run
(「紳士は走らない」は日本でもよく
言われているイギリス人の特徴であり
紳士としての嗜みです。
「常に冷静さを保とう」の意味です。)
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国籍ではなく人となりが文化を作るということがよく分かります。どこの国に行っても礼節ない人はいて、同じようにどこの国にも礼節ある人がいます。国籍をもらえればその国の人になれるわけではありませんが、逆に国籍をもらえなくても、その国の人と遜色ない人もいます。日本語には「郷に入っては郷に従え」という言葉があるように、どんな人でもその国に馴染んでこそ、初めてその国の人になれるんだな、と、そしてそんな人たちが国を作るべきなんだな、と思いました。
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